【札幌 弁護士コラム】従業員の情報持ち出しの問題:営業秘密はどうやって守る?

【札幌 弁護士コラム】従業員の情報持ち出しの問題:営業秘密はどうやって守る?

このコラムでは非常に珍しい労働関係のお話です(笑)。
私は企業の顧問業務が多いのですが、実際に顧問先から頂くご相談の8割くらいは労働関係のものであるため、必然的に労働関係の対応は多くなっています。

そんな中で比較的多い問題が、「従業員が会社の営業情報を持ち出していく」というものです。
この問題は2つに分かれますが、1つは営業情報を持って独立する又は他社に移籍するという問題、もう1つが個人情報保護の問題です。
今回は前者のお話をしたいと思います。

会社にとって営業情報は極めて重要なものであり、会社の収益の根幹をなすものです。
営業情報を分解すると大きく顧客情報と技術的情報に分かれます。
営業を中心にしている会社では顧客情報が重要ですし、開発・製造を中心にしている会社では技術的情報が重要なものといえます。
いずれにしても会社で培ってきた情報を流用されてしまうと、その会社の収益が他社に奪われてしまうことになります。
このため、情報の流出に関していかなる法的対応ができるのかが問題になります。

まず、このような営業情報を流出させた場合に損害賠償請求ができないか、ということが問題になります。
これに関しては、民法上、不法行為責任を問うという方法があります。
しかし、不法行為を立証するためには、損害の内容を明らかにしなければならず、かつ情報流出との因果関係を示さなければならないなど、困難が伴う場合が多いといえます。
そこで不正競争防止法違反を主張することが考えられます。
不正競争防止法では「営業秘密」という概念があり、営業秘密を流出させた場合などにはその責任追及がしやすくなっており、損害の推定など立証の難しさが軽減されます。

しかし、不正競争防止法に戻づく対応も事後的な対応に過ぎず、完全に損害が回復できるとはいえません。
そこで事前に従業員と契約するなどして、営業情報が漏れないようにできないかが問題になります。
従業員と契約をするためには、労働契約はもちろん、それに付随する誓約書の締結、就業規則の規定などの方法があります。
そこでよくあるのが「競業避止条項」です。
これは「当社に在職中及び当社を退職後〇年間、当社と同業他社の役員、従業員等になってはならなず、自ら同業の営業行為を行ってはならない。」などとして、自社の情報を他のところで利用することを止めるものです。
これに違反した場合には違約金等の損害賠償義務が課されたり、退職金が減額されたりするなどの規定がなされます。
しかし、この方法にも限界があります。
それは、退職後については従業員を縛る程度が強すぎると無効とされる場合があるということです。
裁判例では、制限される業種、地域等の範囲、従業員の地位、競業避止条項が規定されるに至った経緯、代償措置の有無等が勘案されます。
このうち、特に会社が意識していないものが代償措置です。
代償措置とは、退職に当たって会社が従業員に支払う、競業避止を守ってもらうための金銭のことです。
裁判例ではかなり強調されているわりに、実際に退職に当たって単なる退職金とは別に競業避止を確約させるために金銭を支払うという事例はあまり聞かれません。

いずれにしても営業情報の流出を法的に防ぐということは容易なことではありませんので、平時から営業情報の重要性を意識し、事前の対策を立てておくことが必要でしょう。

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